書籍_ルポ 百田尚樹現象: 愛国ポピュリズムの現在地_石戸 諭
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百田尚樹は“ヒーロー”か“ぺてん師”か
“安倍政権に最も近い作家”といわれる百田尚樹氏は、なぜ賛否両論を巻き起こしながら日本中の注目を集めるのか?
気鋭のノンフィクションライターが本人に5時間半の独占取材。見城徹氏、花田紀凱氏らキーパーソンの証言から、現象の本質に迫る。
「新しい歴史教科書をつくる会」の西尾幹二氏、藤岡信勝氏、小林よしのり氏への徹底取材から見えた右派論壇の断絶とは?
――共同通信、東京新聞、群像、婦人公論、Honzなど書評続々。
以前から、SNSがもたらす社会現象の分析に興味がある。日本でこれを考える際には欠かすことのできない、百田尚樹には興味を持っていた
基本的に"リベラル"な自分はこの人は敬遠する対象で、著作を一冊も読んだことがない
百田尚樹の本質は「1:言い切りを中心とした語り口の、面白さ」「2:反権威で市井の人の感覚を大事にすること」「3:その市井の人の中に、反中・嫌韓の気持ちが確実に少なからずありそれが土壌になっている(その気持ちを、左派はつかめていない)」の三点だとの著者の分析。頷ける。政治性は実は二の次なのだ
特に最初の二点は齋藤環先生が「ヤンキー論」で指摘していた、日本人が好む「ヤンキー気質」と全く一緒
そして、「普通の人が感動すること」に全てを捧げ、その時々の意見を率直に語る。個人的な根拠となるような情念は無い。新しい存在。
こういう歴史認識運動の中心になるのは、ほとんどが歴史の専門家ではなく分野違いの人、との指摘はなるほど
南京大虐殺はあったか無かったか、と言う論争には、日中で合同でやった実証的研究がある(が、ほとんど無視されてしまっている)
百田尚樹も小林よしのりも、実際に著者がインタビューをしてみると、真面目で良い人で過激なところなど無い、と言うのが面白い
若手のルポライターがこんなに良い仕事をしてくれて尊敬しきりではあるが、できれば、百田氏に活躍の場を与えているTwitter社の取材もして欲しかった
SNSが社会にもたらす脅威という面で言えば、諸外国の方がよっぽど危ない現実を色々と読んできているので、日本はまだマシか、とも思う
自分なりにまとめてみると、世の中に存在する「権威」を敵に定める。(それがある程度幻想であってもいい)→普通の人の感情に同調する言葉を言い切りよく言う。この人は本音で話していると思わせる。理論や理屈はどうでもいい。こうすると、一定の層からは嫌われるが、その覚悟さえ決めれば一定の支持が取れる、と言うことだろう。この法則に世界のいろんな指導者を当てはめてみると、恐ろしいほど該当例が多い。この法則の効果を増幅させるのが、SNSツールということなのだろう。
2021/2/1